蟹の思い出

蟹の思い出

私は、生まれも育ちも漁師町、父親の職業も漁師でした。
幼い頃は、蟹をおやつ変わりに食べていた記憶もあります。

 

そんな私は18歳になり地方の漁師町から東京の大学へと進学
しました。
初めての一人暮らしに都会での貧乏暮し、生活するのにどれほどの
お金が必要なのかも知りませんでした。

 

田舎の実家では、新鮮な海の幸はタダでも手に入る程、
当たり前のように頂いていましたから、
都会のスーパーで売られている海産物に付けられている値札を見て
驚くというより、
正直、馬鹿らしくなる程の値札が付いているのにも
ショックを受けました。

 

そして高級食材でもある蟹は、実家でも高級の部類に入りましたが、
運よく都会暮らしの大学生にも頂ける機会がありました。

 

私は、幼いころから食べていた味を想像しながら興奮し、大喜びで
いただきました。
そして間もなく、その味の違いに驚くほど落胆したのでした。

 

あえて当時の、その感想を述べるなら「値段は高いが冷凍食品には
変わりがない」の一言です。

 

笑い話になりますが、東京の友人と家呑みをする機会があり、
それぞれツマミを持寄りました。

 

その中に、それはそれは綺麗に並べられた本物の蟹の身かと
見紛う程の蟹蒲鉾があり、
実際に、本物の蟹の身も使われていて、
蒲鉾にしては少々高価なものでした。

 

私が試食をしたところでは、蒲鉾以外の何物でもないといった
感じでしたが友人は暫く騙されていました。

 

都会の子の舌とは、こんな物かと少々自分に対して優越感の様な
ものを
一瞬でも感じた事を覚えています。"